Backers Jacket (バッカーズジャケット）

アメリカ西海岸に、「パッカブルーマン」と呼ばれるナイスガイがいた。
髪はきちんと整えられ、服には一切のシワも埃もない。いつも清潔で、穏やかに微笑み、誰にでも丁寧に接するその姿は、まさに完全無欠だった。
彼はいつもデイバッグを背負っており、その中には“必要なもの”がすべて詰まっていた。
折りたたみ傘、パッカブルジャケット、携帯バッテリー、歯ブラシセット。予備のハンカチは2枚。500mlのミネラルウォーターが2本。
緊急食にカロリーメイトとウィダーインゼリー。
さらには頭痛、腹痛、アレルギー、乗り物酔いなど、あらゆる“もしも”に対応できる薬のセット。
それらはすべて、無駄なく、美しく、丁寧にパッキングされていた。
そのリュックには、迷いがなく、思想が詰まっていた。
そんな完璧な彼だが、唯一「空気を読む」ことだけができなかった。
もっと言えば、彼は空気を“必要としていなかった”。
それはきっと、彼が育った環境のせいかもしれない——だが、それはまた別の話。
＊　＊　＊
ある7月最初の金曜日。
天気予報は晴れだったが、夕方になって急な豪雨が街を襲った。
アベックはコーヒーショップの軒先で雨宿りしていた 二人はまだ恋人同士ではなかったが、お互いに好意を持っていた。
これからレストランに向かうところだった。
雨が少し弱まり、彼女がカバンから折りたたみ傘を出した。
彼氏も傘を持っていたが、それを出さずに彼女の傘に入ろうとした——その時だった。
雨をはじくように走ってきたのは、パッカブルーマンだった。
デイバッグのジップを開け、彼は素早く折りたたみ傘を取り出し、彼氏に差し出した。
「いえ、彼女の傘に入りますので大丈夫です」と遠慮する彼に、
「遠慮は美徳ではないよ。彼女が濡れて風邪でもひいたら大変だから」と、にこやかに言いながら、半ば強引に傘を手渡した。
「では」と彼はいつもの爽やかな笑顔を残し、雨の中を駆け去っていった。
その一方で、彼氏の顔は引きつっていた。
彼氏があきらめて傘をさし、「行こうか」と言うと、彼女は自分の傘を閉じて彼の傘に入り、「狭いね」と微笑んだ。
　　二人の距離は、確かに縮まっていた。
レストランに着く頃には雨は止んでいたが、二人はそのまま傘を差して歩いていた。
そんな良い雰囲気の中、パッカブルーマンは再び現れた。
空を指差し、「雨は止んだ」と、あの爽やかな笑顔で腰に手を当てて立っている。
彼氏は傘をたたみ、お辞儀をして返した。
すると彼はそれを受け取る代わりに、ポーチのようなものを彼氏に手渡し、「では」とまた走り去っていった。
二人が顔を見合わせて笑い、そのポーチを開くと、それはジャケットだった。

＊　＊　＊

「“備える”ことって、“誰かを想ってる”ことと似てる気がするんですよ」
彼はそう言ってドクターペッパーの缶を開け、ひと口飲む。
今日もまた、街のどこかで——
パッカブルーマンは“優しさ”を背負って歩いている。
静かに、確かに、誰かの“ちょっとした困った”に応えるために。


少年パンツとセットアップで着用可。

XSサイズ <肩幅>41cm <身幅>54cm <着丈>71cm <袖丈>59cm
Sサイズ <肩幅>44cm <身幅>57cm <着丈>73cm <袖丈>61cm
Mサイズ <肩幅>46cm <身幅>59cm <着丈>75cm <袖丈>63cm
Lサイズ <肩幅>49cm <身幅>62cm <着丈>77cm <袖丈>65cm

ポリエステル100%
製品の仕様は予告なく変更することがありますのでご了承ください。


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